台湾 Palmax 社と意見交換

1999年12月16日
木本豪(わたくし)

Taiwan Palmax
(台湾 Palmax 社の工場があるビル.「神寶科技」は Palmax 社の漢字名.)

前回までのあらすじ:
わたくしは 9 月(3 か月前)に香港を訪れて そこで PD-1100 を買う予定であった. しかし,PD-1100は入荷せず, おまけに台風のせいで成田から飛行機が飛ばなかった. その後通信販売で PD-1100 はゲットに成功. しかし香港にいけなかった事実がトラウマとなっていた.

登場人物:
「豊島さん」:前回も同行してくださる 予定だったかた. わたくしと同時に PD-1100 を入手された. 今回は台湾,香港とも同行をおねがいした.

■雪辱

今度こそは香港にたどりついてやる. ついでに途中で台湾にもよっていくぞ! と,気合を入れて,わたくし木本は 台湾・香港へいってまいりました.

■台湾 Palmax 社(の工場)に到着

「おお!今度こそ Palmax 社の受け付けだ!間違いない!」

ご本家台湾 Palmax 社工場の受け付けに到着. ここにくるまでに二度間違えたのだ.

あー,ここが Palmax のご本家かあ,と 感慨深くなってしまうわたくし.

受付の前で,女性社員たちがクリスマスの 飾り付けをしていた. 型紙をガラスに押し付けて雪のスプレーを吹き付けるアレ である. みんな同じ黄色いジャケットを来ている.胸にはPalmax のロゴ. ユニフォームか.

あー,このおねえさんたちはみんな Palmax の人たち なんだなあ,と感慨深くなってしまうわたくし.

豊島さんが話しかける. 「エクスキューズミー, チー=ペイ=リーさんはいるか?」

あわてるおねえさんたち. 「外人がくるなんてきいてないよー.」 「チー=ペイ=リーって誰?」

チー=ペイ=リー氏は豊島さんがメールで アポイントメントをとっていた人で, 当然,Palmax 社の人なのだが すぐにはわからなかったらしい.


(左手に雪スプレー,右手に受話器.)

ちと狭いがこぎれいな部屋に通されてお茶をいただく. チー=ペイ=リーは台北から車でくるので待てという. われわれが訪問した工場は台北から離れたところにある. 東京と千葉の関係といっていいだろうか. 台北には Palmax の Head Office があるそうだから そこで待っていたのだろうか. あるいは,本当にわれわれがくるとは 思っていなかったのかもしれない.

View from Space of Taipei, Taiwan

待つついでに CD-ROM ドライブを貸してもらう. 実は豊島さんは いまだ PD-1100 への日本語 Windows のインストールに 成功していないのだ. ここで CD-ROM ドライブを貸してもらうのが 旅の目的のひとつであった. 待つ間は日本語 Windows 95 のインストールにチャレンジ.


(手前:木本の PD-1100.奥:豊島さんのPD-1100)

■Palmax 社と意見交換

チー=ペイ=リー氏,到着.

「ナイストゥーミーテュー.」

チー=ペイ=リー氏は,落ち着いた感じでインテリそうな紳士であった.

「ナイストゥーミーテュー,ドッキングステーションをかしてくれないか?」

CD-ROM ドライブだけではらちがあかない 豊島さん,ドッキングステーションも借りる.

「なぜ台湾にいらしたのですか? 香港にいってサウスチャイナ(SCHOT 社)に話をきいても同じことなのに.」

なぜといわれても困る. 台湾がわたくしにとってメッカであり 聖地であり巡礼に来たのだと いったら絶対へんなやつだとおもわれるよなあ.

「いや,たいした理由はありません. ただ訪問して話をしたかっただけです.」

けっしてドッキングステーションを借りに来たわけでは ありません.

わたくしのページ「Palmax とわたくし」 や「ペンな掲示板」をプリントアウトしたものを あげた. 日本語が読めなくても雰囲気だけ伝わればと思って わたしたのだが, チー=ペイ=リー氏は,ひらがなも少しは読めるらしい. さすがだ.


ムービー 20kbps for RealPlayer
ムービー 416kbps for Windows Media Player

豊島さんのマシンのインストールをしつつ, 会社概要の説明をうける. だいたい, Palmax 社のサイトにある 会社概要のページといっしょだ. 違うのは,最近「Kinpo Group」という 企業グループの「Compal」という会社に買収されたという ことぐらいだろうか. ISO 9001 を取得したことをやけに強調していた. 台湾のファブなメーカーは ISO 9001 を とっておかないと注文がこなくなったりするらしい.

■紫を作らない理由

一番ききたかったことをぶつけてみる.

「なぜ PD-1100 では紫を出さないのか?」

「売れないからです. PD-1000 はアメリカやヨーロッパ(ドイツなど)でも 売っていますが紫は人気がないのです. ヨーロッパで紫が売れたのは イタリアとスペインだけでした.」

んん〜,わかりやすい! ヨーロッパではイタリアとスペインだけ,てぇところが, ある意味すごい説得力だ! ぐうの音も出ない.

■ウェブ通販の予定なし

「ウェブ上での通信販売はしないのか? クレジットカードが使えれば 日本から買う人もいると思うのだが.」

「エレクトリックコマースは セキュリティの問題があると考えているのでやりません. Palmax 社は代理店に卸したり OEM 供給をするのが仕事です. 個人に販売することは考えていません. 個人を相手にするとサポートなどに 人をさかなければいけなくなってしまいます. サポート業務は代理店にまかせています.」

やっぱり日本から個人が買うなら 台湾 Palmax より香港かどっかの代理店にたのんだほうが よさそうだね.

■ほほえみ君

チー=ペイ=リー氏は東芝 Libretto はもちろん,SONY VAIO や CASIO FIVA など もよく知っていた. しかし「ほほえみ君」は知らなかったようだ.

「Libretto にもタッチパネルを装備した モデルがあったよね.」

そういう話をしたら, すごくおどろいていた. Libretto 50M,明治生命のおばちゃん専用モデル のことである.

「東芝はそれを作っておきながら パブリックには売らなかったのですか?」

信じられない,という口調である. それまで冷静沈着だった彼が, 大きなジェスチャーを交えて感情的にしゃべった. そりゃそうだよな. うまく付加価値で出し抜いたつもりが, 敵はすでにやっていたっていうんだから.

■和文キーボード

もうひとつ,チー=ペイ=リー氏 が驚いてたのは,和文キーボードについて.

「日本語を入力するのに日本語キーボードはいらないよ」

「…………ほんとうですか!」

青天の霹靂,といった様子のチー=ペイ=リー氏.

実際にローマ字入力のデモをするわたくし.

「この入力ソフトウェア(MS-IME)は 日本語 Windows に必ずバンドルされている.」

「ふうむ.」

さらにたたみかける豊島さん.

「多くの日本人はローマ字入力に慣れている.」

「ふむむ.」

このときわたくしは思ったのだが, 日本語キーボードでないとだめな人って, どのくらいいるのだろうか. もしチー=ペイ=リー氏に同じことを きかれたら答えられなかっただろう.

■リサーチされる

チー=ペイ=リー氏からわれわれに質問.

「日本市場で売るのに,いいアイデアはありますか.」

「紫モデルを作って.」

「それはさておき,日本市場で売るのにいいアイデアはありますか.」

「紫モデルがほしい.」

「話は変わるが,日本市場で売るのに,いいアイデアはありますか.」

「紫があったらなあ.」

話がかみあってないぞ!!

しかし,三度も同じ質問をするとは, 本気でいいアイデアをほしがっているのだなあ.

より具体的な質問に 切り替えるチー=ペイ=リー氏.

「PD-1100 は,日本市場でいくらだったら売れると思われますか?」

「日本語ウィンドウズをプリインストールして,これこれ,かな.」

「日本での Libretto の価格はいくらですか?」

「実売価格で,これこれ,かな.」

「その差,3万円ですか,3万円安いだけで勝負できるでしょうか?」

「んーーーむーー.(悩む)」

「Libretto は日本で売れていますか?」

「雑誌記事などではポピュラーな機種であることは間違いないが, 売れているか,となると,んむーー. たぶん,昔ほどのシェアはないと思う.んむー.(悩む)」

チー=ペイ=リー氏,本気だ. 本気の質問にたじたじなわれわれ.

■閉幕

従業員たちが帰り始めたころ, ようやく豊島さんの PD-1100 で 日本語 Windows 95 が立ち上がる. いくつかのデバイスが正しく認識されていない ようだが,ここにくるまえは 「Operating System not Found」だったから おおきな前進である. ここでドッキングステーションを借りることができたおかげで ここまでこれた.

豊島さんの最後の質問.

「このミーティングはあなたにとって有益だったか.」

チー=ペイ=リー氏,笑顔でこたえる.

「もちろんです.」

インストール作業につきあわせてしまってもうしわけない, 本当はこれが目的で来たわけじゃなかったんだ, と,豊島さんはいいたかったらしい.

■また次回

残念ながら,時間の問題もあって, 製造ラインは見ることができなかった. それはまた次回のお楽しみってことで. いや,次回の予定はないんだけど.

■本日の教訓

「台湾・香港の会社や人を訪問するときはまえもって 相手の名前と住所を漢字でメモしておきましょう. 現地に入ると英語名ではなかなか通じない場合があります.」


(「神寶科技」とある.このエレベータを上れば Palmax か?)


(でも,「非本棟」という落書きがある.)


(さっきのはやはり違った.こっちが本当の入り口.)


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