(台湾 Palmax 社の工場があるビル.「神寶科技」は Palmax 社の漢字名.)
前回までのあらすじ:
わたくしは 9 月(3 か月前)に香港を訪れて
そこで PD-1100 を買う予定であった.
しかし,PD-1100は入荷せず,
おまけに台風のせいで成田から飛行機が飛ばなかった.
その後通信販売で PD-1100 はゲットに成功.
しかし香港にいけなかった事実がトラウマとなっていた.
登場人物:
「豊島さん」:前回も同行してくださる
予定だったかた.
わたくしと同時に PD-1100 を入手された.
今回は台湾,香港とも同行をおねがいした.
今度こそは香港にたどりついてやる. ついでに途中で台湾にもよっていくぞ! と,気合を入れて,わたくし木本は 台湾・香港へいってまいりました.
「おお!今度こそ Palmax 社の受け付けだ!間違いない!」
ご本家台湾 Palmax 社工場の受け付けに到着. ここにくるまでに二度間違えたのだ.
あー,ここが Palmax のご本家かあ,と 感慨深くなってしまうわたくし.
受付の前で,女性社員たちがクリスマスの 飾り付けをしていた. 型紙をガラスに押し付けて雪のスプレーを吹き付けるアレ である. みんな同じ黄色いジャケットを来ている.胸にはPalmax のロゴ. ユニフォームか.
あー,このおねえさんたちはみんな Palmax の人たち なんだなあ,と感慨深くなってしまうわたくし.
豊島さんが話しかける. 「エクスキューズミー, チー=ペイ=リーさんはいるか?」
あわてるおねえさんたち. 「外人がくるなんてきいてないよー.」 「チー=ペイ=リーって誰?」
チー=ペイ=リー氏は豊島さんがメールで アポイントメントをとっていた人で, 当然,Palmax 社の人なのだが すぐにはわからなかったらしい.
ちと狭いがこぎれいな部屋に通されてお茶をいただく. チー=ペイ=リーは台北から車でくるので待てという. われわれが訪問した工場は台北から離れたところにある. 東京と千葉の関係といっていいだろうか. 台北には Palmax の Head Office があるそうだから そこで待っていたのだろうか. あるいは,本当にわれわれがくるとは 思っていなかったのかもしれない.
待つついでに CD-ROM ドライブを貸してもらう. 実は豊島さんは いまだ PD-1100 への日本語 Windows のインストールに 成功していないのだ. ここで CD-ROM ドライブを貸してもらうのが 旅の目的のひとつであった. 待つ間は日本語 Windows 95 のインストールにチャレンジ.
(手前:木本の PD-1100.奥:豊島さんのPD-1100)
チー=ペイ=リー氏,到着.
「ナイストゥーミーテュー.」
チー=ペイ=リー氏は,落ち着いた感じでインテリそうな紳士であった.
「ナイストゥーミーテュー,ドッキングステーションをかしてくれないか?」
CD-ROM ドライブだけではらちがあかない 豊島さん,ドッキングステーションも借りる.
「なぜ台湾にいらしたのですか? 香港にいってサウスチャイナ(SCHOT 社)に話をきいても同じことなのに.」
なぜといわれても困る. 台湾がわたくしにとってメッカであり 聖地であり巡礼に来たのだと いったら絶対へんなやつだとおもわれるよなあ.
「いや,たいした理由はありません. ただ訪問して話をしたかっただけです.」
けっしてドッキングステーションを借りに来たわけでは ありません.
わたくしのページ「Palmax とわたくし」 や「ペンな掲示板」をプリントアウトしたものを あげた. 日本語が読めなくても雰囲気だけ伝わればと思って わたしたのだが, チー=ペイ=リー氏は,ひらがなも少しは読めるらしい. さすがだ.
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豊島さんのマシンのインストールをしつつ, 会社概要の説明をうける. だいたい, Palmax 社のサイトにある 会社概要のページといっしょだ. 違うのは,最近「Kinpo Group」という 企業グループの「Compal」という会社に買収されたという ことぐらいだろうか. ISO 9001 を取得したことをやけに強調していた. 台湾のファブなメーカーは ISO 9001 を とっておかないと注文がこなくなったりするらしい.
一番ききたかったことをぶつけてみる.
「なぜ PD-1100 では紫を出さないのか?」
「売れないからです. PD-1000 はアメリカやヨーロッパ(ドイツなど)でも 売っていますが紫は人気がないのです. ヨーロッパで紫が売れたのは イタリアとスペインだけでした.」
んん〜,わかりやすい! ヨーロッパではイタリアとスペインだけ,てぇところが, ある意味すごい説得力だ! ぐうの音も出ない.
「ウェブ上での通信販売はしないのか? クレジットカードが使えれば 日本から買う人もいると思うのだが.」
「エレクトリックコマースは セキュリティの問題があると考えているのでやりません. Palmax 社は代理店に卸したり OEM 供給をするのが仕事です. 個人に販売することは考えていません. 個人を相手にするとサポートなどに 人をさかなければいけなくなってしまいます. サポート業務は代理店にまかせています.」
やっぱり日本から個人が買うなら 台湾 Palmax より香港かどっかの代理店にたのんだほうが よさそうだね.
チー=ペイ=リー氏は東芝 Libretto はもちろん,SONY VAIO や CASIO FIVA など もよく知っていた. しかし「ほほえみ君」は知らなかったようだ.
「Libretto にもタッチパネルを装備した モデルがあったよね.」
そういう話をしたら, すごくおどろいていた. Libretto 50M,明治生命のおばちゃん専用モデル のことである.
「東芝はそれを作っておきながら パブリックには売らなかったのですか?」
信じられない,という口調である. それまで冷静沈着だった彼が, 大きなジェスチャーを交えて感情的にしゃべった. そりゃそうだよな. うまく付加価値で出し抜いたつもりが, 敵はすでにやっていたっていうんだから.
もうひとつ,チー=ペイ=リー氏 が驚いてたのは,和文キーボードについて.
「日本語を入力するのに日本語キーボードはいらないよ」
「…………ほんとうですか!」
青天の霹靂,といった様子のチー=ペイ=リー氏.
実際にローマ字入力のデモをするわたくし.
「この入力ソフトウェア(MS-IME)は 日本語 Windows に必ずバンドルされている.」
「ふうむ.」
さらにたたみかける豊島さん.
「多くの日本人はローマ字入力に慣れている.」
「ふむむ.」
このときわたくしは思ったのだが, 日本語キーボードでないとだめな人って, どのくらいいるのだろうか. もしチー=ペイ=リー氏に同じことを きかれたら答えられなかっただろう.
チー=ペイ=リー氏からわれわれに質問.
「日本市場で売るのに,いいアイデアはありますか.」
「紫モデルを作って.」
「それはさておき,日本市場で売るのにいいアイデアはありますか.」
「紫モデルがほしい.」
「話は変わるが,日本市場で売るのに,いいアイデアはありますか.」
「紫があったらなあ.」
話がかみあってないぞ!!
しかし,三度も同じ質問をするとは, 本気でいいアイデアをほしがっているのだなあ.
より具体的な質問に 切り替えるチー=ペイ=リー氏.
「PD-1100 は,日本市場でいくらだったら売れると思われますか?」
「日本語ウィンドウズをプリインストールして,これこれ,かな.」
「日本での Libretto の価格はいくらですか?」
「実売価格で,これこれ,かな.」
「その差,3万円ですか,3万円安いだけで勝負できるでしょうか?」
「んーーーむーー.(悩む)」
「Libretto は日本で売れていますか?」
「雑誌記事などではポピュラーな機種であることは間違いないが, 売れているか,となると,んむーー. たぶん,昔ほどのシェアはないと思う.んむー.(悩む)」
チー=ペイ=リー氏,本気だ. 本気の質問にたじたじなわれわれ.
従業員たちが帰り始めたころ, ようやく豊島さんの PD-1100 で 日本語 Windows 95 が立ち上がる. いくつかのデバイスが正しく認識されていない ようだが,ここにくるまえは 「Operating System not Found」だったから おおきな前進である. ここでドッキングステーションを借りることができたおかげで ここまでこれた.
豊島さんの最後の質問.
「このミーティングはあなたにとって有益だったか.」
チー=ペイ=リー氏,笑顔でこたえる.
「もちろんです.」
インストール作業につきあわせてしまってもうしわけない, 本当はこれが目的で来たわけじゃなかったんだ, と,豊島さんはいいたかったらしい.
残念ながら,時間の問題もあって, 製造ラインは見ることができなかった. それはまた次回のお楽しみってことで. いや,次回の予定はないんだけど.
「台湾・香港の会社や人を訪問するときはまえもって 相手の名前と住所を漢字でメモしておきましょう. 現地に入ると英語名ではなかなか通じない場合があります.」
(「神寶科技」とある.このエレベータを上れば Palmax か?)